希望は正四面体の形をしている
あいも変わらず毒性のある花の話である。
花はまだ咲いており、私の部屋で唯一むらむらと生気を放っている。
そして先週ごろから花の中心に緑色のさやのようなものが発生した。
少女の腹から突き出たエイリアンのようにも見える。
が、検索すると、どうやら種らしい。落ちた花についていたものをカッターで開いてみると、中には白く正四面体の粒が並んで入っていた。ソバの実のような形だ。
さやが茶色くなって来たら取っておき、乾燥させると、種として再び花を咲かせるらしい。
前に買った時はさやなど欠片も見えなかったので、切り花でもそんなことがあるのかと驚いた。土から離れた後で種を残す。死んだ胎で育つ子。手塚作品的なモチーフだ。
暑さに弱く寒さに強いため、次に種を蒔くことが出来るのは今年の冬になるらしい。
まずは上手く種になるようにと思いながら、何となく、物語の最後で「子供が産まれる」ことが多い理由が分かった。
種とは希望で、可能性だ。
上手くいきますようにと願いながら、その過程を想うのは楽しい。
その種が、ある物語では子供の形をとり、別の物語では握手になるのだろう。そして今の私の部屋では、正四面体の形をしている。
今まで捻くれて「出産はゴールではないだろ」と思っていたが、これでなるほど、納得がいった。
花に学ぶことの多い人生である。
↓押した人には楽しい花見体験が訪れ(るように祈り)ます
また毒性のある花を買った話
軽挙妄動でおなじみの当ブログだが、最もひやっとしたのは毒性のある花を食べてしまった時だ。
食べたいほど可愛い、が募って花を食べたら神経毒のあるらしい花だった、という驚きの軽率さ。自分でもあれは流石に肝が冷えた。
今度は絶対にどれだけ可愛くても食べるものかと思いながら、前と同じ花を買ってきた。青い花だ。毒性の有無は関係なく、色が良いのでリピートしたということになる。
人生が怖いと私は花を買う。花からは「ちゃんとした生活」の香りがする。
これからの人生というものが気が狂いそうに恐ろしいのだが、気が狂うほど怠惰なので特にすごい努力などはしていない。石油王よ早く私を見つけてくれ。
目の下に隈が出やすい陰気な人間なので、せめてブログくらいは陽気にしたいのだが、いまいちその元気もない。最近考えているのは専らガタカの二次創作について、それからベンチャー企業をからかう漫才ぐらいのもんである。
そうなのだ。よく考えると楽しいことは結構ある。電車を乗り継いで空き地に行くとか、小説を書くとか、ネットフリックスで作画の凄いアニメを見るとか。
問題はそれが生きていくことには繋がらないということだ。(当たり前だが)
みんな金の話ばかりしている。
ガタカのように、生まれた瞬間に自分の推定寿命が分かるなら、もっと心穏やかに生きられるのだろうか。だらだら長く生きた後、のたれ死にそうで怖い。
「将来が怖いならブログ書いてないでちゃんと現実を生きろ」というお叱りの声もあるだろうが、私はまだここに至って、ウェブメディアのなんか偉い人に何かの才能を見出されて正社員ライターになるという無謀な夢を捨てていないので許してほしい。
限りなく0でも0でなければ可能性はあると何かの漫画で読んだ。
ガタカで思い出したが、先日またガタカを友人に布教することに成功した。
人の家にDVDを持って押しかけ「これを観てくれなければお前の敷金礼金を二目と見られない姿にしてやる」と紳士的に交渉すれば、信用を無くす代わりに顔の良い推しを見せつけることが出来ることを学んだ。
天才的なキモオタ・ライフハックである。
最近は春の陽気を感じるが、私には未だ春は遠い。親しい人々が駆け抜けるように私を置いていく。
楽しそうなSNSを見た後でベランダで隠れて煙草を吸いながら、どうしようもないことを考える自分がやりきれない。やりきれないので腕を振って踊っている。
そう、私は割と元気です。嵐になった桜を見に行くついでに面接に行くつもり。
↓押してもらえると小躍りの勢いが増します
最近観たもの
人生がままならないのに、シャーロックホームズ観たさでNetflixにお試し登録してしまったのが一ヶ月前のことだ。
シャーロックはとても良かった。ぜひ聖典を読みたい。
個人的にツボだったのは、ジョンが歩く時にはいつも脇が空いているところだ。軍人を見たことがないのに「軍人ぽいな」と思わせるような細部に惹かれる。
そしてシャーロックの他にも色々観た。何事も継続が大事だと聞いたので、紹介記事としておいておく。
『セックス・エデュケーション』
ネトフリオリジナルドラマ。セックス・セラピストの母親を持つ主人公が、その知識を活かして学校の生徒の「性の悩み」を解決していくドラマ。
カジュアルにヤってるシーンが入るので絶対に居間で見てはいけないが、主人公が相談者たちに「対話」をさせようとするシーンがかなり良い。すれ違い、認識の齟齬などが主人公の助言や質問によって解消されていくのがハラハラしつつも小気味よく、パズルがはまっていく感覚で面白い。フロイトの夢判断を読んでいる感じに似ている。
高校を舞台にした青春の物語でもあるので、海外の学園ドラマが好きな人は意外とハマりそうだ。
『ロマンチックじゃない?』
こちらもネトフリオリジナル。
よく少女漫画などで「環境は変わらない。だからあなたが変わるしかないの!」的なセリフがあるが、この映画はその逆をいく。
「自分が好きじゃなくて、周りもあなたを尊重してくれない?うーん、オッケー!環境を変えましょう!!」(神の声)と言う感じで、自己肯定感の低く冴えない主人公の周囲が一夜にしてガラッと「ラブコメ」の世界に変わるのだ。
朝チュンやお着替えシーンなど、思わず「あるある!」と頷くようなラブコメのお約束がメタ的に扱われていてつい笑ってしまう。
家が広くなり、イケメンに口説かれ、みんなが自分を尊重するようになった世界で、しかし主人公は元の世界に戻るために「ラブコメ」を完遂させようと奔走する。
『凪のお暇』(自己肯定力の低いOLが空気を読むことに疲れ果て退社して人生を見つめ直し始めたは良いが口座も心も全然休まらない漫画)がヒット したことを考えると、最近は「一度低下した自分の重要度を、どのようにして再び上げるか」と言うことがテーマになってきているのだろう。
「強くて異世界転生」系の作品は言ってみれば「今のままでは自分を好きになれそうもないから、強大な力と新しい環境を得たい」という感情から支持されているのか。
ゆとり世代として公に馬鹿にされてきたこととか関係あんのかな…
さて。
段々もう読むのに疲れた気配を画面の向こうからビンビン感じるので、あとは私のツイートを引用してうやむや的に終わろうかと思う。
いつもブログを見てくださって本当にありがとうございます。誰が見てるんだろう。こんなネットの片隅のブログを見てくれるなんて、きっと奇特で優しくてセンスがあって、海より広く山より高い心を持っている人なんだろうなあ……
婚約者とギクシャクする小説家志望の男がパリの街で迷子。不思議な車に乗り込むと何故か1920年代のパリへ。
女に贈るピアスを婚約者のジュエリーボックスから拝借しようとすな!!
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月6日
浮気する婚約者も婚約者だけど!
ラスト、主人公がパリに住むと決めてから眺めたパリが日常的で、幻想的に美しくなかったのが良かったな。コカコーラの空き瓶、そばかすの女の子、視線を分散させる雑多なあれこれ。本当に住んだらあんな感じなんだろうか。
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月6日
最後の雨、そんな強くなくて良くない?!
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月6日
あとはダリが出てくるんですけど、あからさまなダリ髭じゃないのに一目で「あっ!ダリだ!」と分かるのですごい。
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月6日
『ネオ・ヨキオ』
ネオ・ヨキオという近未来の街で「名家の末裔・ホッケー部エース・ファッショナブル・ずっと隣にジュード・ロウ」という全然共感出来ない主人公が悪霊払いをするアニメ。女に振られたショックで貰い物のカルティエを壊すな。
ネオヨキオすごいな
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月4日
白くてデカくて角ばってる執事ロボットの声がジュードロウ
しかもそのロボット全然戦わないし、主人公の行く所どこでもついてくるし、なんなら移動手段だし、音楽プレーヤー兼ねてるし、声がジュードロウ
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月4日
↓顔もカッコ良かったよね、とGoogleで画像検索して
いやジュードロウ顔がいいな?!?!
— 三橋明 (@akr_3ha) 2019年3月4日
ジュードロウ は顔がいい。これだけ覚えて帰ってください。それでは。
ほとほと(古事記の話)
ガタカの話をやっとし終えたので、何か一つ荷を降ろしたような気持ちになっている。
そうなると矢継ぎ早に更新してみたくなるものだ。
そこで、最近再読している古事記の面白かった箇所を覚書程度に書いておこうかと思う。日本文学専攻ではないので間違いがあったら申し訳ない。
と言っておいて、エンタメ的な意味で面白いかと言えば微妙なところだ。古事記の描写はさすが神代の話という感じで、残虐とあらば容赦がない。あるのは100の暴力で、例えば須佐之男(スサノヲ)が姉の天照大神(アマテラス)のいる高天原を訪ねて行った時のこと。
急にやって来た弟に対し「自分の国を獲りに来たのでは」と疑って武装する姉。スサノヲはそれに「そういう悪意を持って来た訳ではない。証明して見せよう」と言って、姉に賭けを持ちかける。二人でそれぞれ神を生み、その質によって自分に悪心がないということを証明しよう、という訳だ。
随分大掛かりなコイントスだが、この賭けにおいてスサノヲは女の神を生み「このようにたおやかな女を生んだ私に悪意があるわけがない。勝った!」と言う。その論理もなんだろうなあ、とは思うが、さらに強引なのはこの後で、勝ったのをいいことにスサノヲは姉の領地で暴虐の限りをし始める。
天照大御神の営田の畔を離ち、その溝を埋め、またその大嘗を聞こしめす殿に屎まり散らしき。(岩波文庫、p39)
姉の耕作している畑をぶっ壊し、新しい穀物を食べるために年1で使う神聖な食卓にクソを撒き散らす。悪意を疑われたことへの報復としてはやりすぎではないのか。
姉もまた「同じ行いがお前にも返ってくるんだからな」と言って止めるが、スサノヲは全く止まらない。
天照大御神、忌服屋に坐して、神御衣織らしめたまひし時、その服屋の頂を穿ち、天の斑馬を逆剥ぎに剥ぎて堕とし入るる時に、天の服織女見驚きて、梭に陰上を衝きて死にき。
アマテラスが清浄な機屋(機織り小屋)にいらして、神に献上する服を織っていた時に、スサノヲがその小屋の屋根を壊して、尾の方から皮を剥いだまだら模様の馬を落とし入れた。それを機織り小屋にいた女が見て驚き、機の横糸を通す道具(シャトル)で性器を怪我して死んだ。
勝ったからって何してもいいと言う訳ではないだろ、といった感じ。なぜ馬を剥ぐのか。なぜ落とすのか。なぜ道具で性器を怪我して死ぬのか。クソを蒔くことに恥じらいはないのか。
陰(ほと)は製鉄、あるいは製鉄に不可欠なエネルギーを指すと言う話があるけれど、それにしても女の受ける被害が生半なものではない。仕事道具で股を怪我して死ぬのは嫌な死因トップ5に入るでしょ。せめて自宅か病院で死なせてくれ。
そしてこの後アマテラスはかの有名な「天の岩戸」に籠る訳ですが、それを引っ張り出す役目を負った神々のうちの一人、天宇受売命(アメノウズメ)が使ったのも「ほと」。
天宇受売命、天の香山の天の日影を手次に繋げて、天の眞折を鬘として、天の香山の小竹葉を手草に結ひて、天の岩屋戸に槽伏せて踏み轟こし、神懸りして、胸乳をかき出で裳緒を陰に押し垂れき。ここに高天の原動みて、八百萬の神共に嗤ひき。(p.40-41)
アメノウズメは天の香具山の草やこけで自分を飾ると、天の岩戸の前に桶を伏せてその上に乗り、神がかりした人のようになって、胸を出してスカートの紐を性器に入れて垂らした。それで高天原はどよっとなって、やおよろずの神が一緒になって笑った。
ざっくり訳すとこんな感じになるが、しかしどうにもひどい。と言うか、かなり突き抜けた宴会芸だ。どこで思いつくのかも分からなくてすごい。八世紀のtiktokで流行ってたのだろうか。識者がいたら教えて欲しい。
古事記を読んでいると、このようにかなり突き抜けた記述がいくつもいくつも出てくる。そしてそれが、平然とした顔で書かれてある。どうだ、すごいでしょう、と言うのではなく。静かに推しに狂ったオタクが面白いのに似ているだろうか。神話の魅力の一つである。
それにしても、イザナミはほとを火傷して死に、アマテラスは部下がほとを怪我して引きこもり、引きこもった上司の気をひくためにアメノウズメはほとから紐を垂らして騒ぐ。
これが日本の始めの30ページのうちに起こったことだと考えると、女というのは大変だ。万能、というと語弊があるが、とにかくエネルギッシュで多才である。ほとを活かし乳を出し、果ては胎に再生能力を期待される。むちゃくちゃではないか。
むちゃくちゃなのは神代だけにしてほしいものだ。
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ジュード・ロウ(母)をみよ【GATTACA感想】
ガタカが好きだ。
ガタカはSF映画である。顔がいいことで有名なジュード・ロウが出演する。
主演はイーサン・ホークで、この二人が同棲し、夢を掴み、そして離れる。そういう映画である。つまり最高の映画ということだ。
↑サムネが何だかよく分からないトレーラー。売る気があるならジュード・ロウを出した方がいい
舞台は近未来だ。SFといっても、アルファ星人その他のややこしい専門用語は出てこない。人間の遺伝子操作が気軽に出来るようになり、身分証明書の代わりに当たり前に血や尿を提出するようになった世界とだけ覚えていて貰えばいい。遺伝子の優劣が全てを決める世界だ。
主人公は、宇宙飛行士を目指している青年だ。幼い時から宇宙を夢見、そして今やその夢に手が届きそうなところに来ている。宇宙飛行局に勤めるエリート、「適正者」として、次の宇宙船のメンバーに選ばれているのだ。上司からの信頼も厚い。
しかし彼には秘密がある。それは、自身の遺伝子情報を偽っているということだ。彼はデザイナーベイビーが当たり前になった時代に、両親のポップなカーセックスによって無整形で生まれて来た子だった。遺伝子には「不適正者」のレッテルを貼られ、宇宙への夢を折られ続けて来た。
しかしどうにも夢を諦めきれず、主人公は闇医者に優れた遺伝子を持つ者との仲介を依頼した。その交換相手がジュード・ロウだ。ここでは交通事故で足を怪我した元エリート水泳選手として現れる。
人生のうち、やはり一度は「退廃的な雰囲気で煙草を蒸す美青年」を見ておきたい。これは多くの人が抱く夢だが、ここではその夢が叶うのだ。
とにかく、ジュード・ロウは、名前と遺伝子を貸す代わりに、金を得ることを約束する。二人は同じ家に住み、世間を騙す共犯者として暮らし始める。
このようにジュード・ロウのスーパー遺伝子を借りたことで、主人公は宇宙飛行局の内定を得ることが出来たのだった。
宇宙への切符を手にした後も試練は続く。主人公の職場で殺人が起きて、謎の「不適正者」(=主人公)が疑われて立場が危うくなったり、なんか職場でいい感じになってた女と恋の駆け引きABCだの何だのがある。物語の主軸としてはそちらがメインなのだろうが、しかし腐女子として、取り上げねばならないのは主人公とジュード・ロウの「エモい」関係だ。
端的に言えば、ジュード・ロウは主人公の母に当たる。
どういうことか。
二人の共通点は、両者とも自分の遺伝子に人生を翻弄されて来た、ということだ。
主人公(ヴィンセント)は、劣っているが故に期待をされず、夢の宇宙飛行局にも門前払いされて来た。
一方ジュード・ロウ(ジェローム)は、遺伝子エリートとして大きな期待を背負って来たが、ついぞ金メダルを取ったことは無かった。彼がヴィンセントに誇って見せるのは常に銀メダルで、その顔には常に一抹の悔しさが滲む。金を期待されて銀しか取れない。それは平凡な遺伝子なら無かったはずの悩みだ。
出会った当初、ジェロームは「遺伝子は貸してやるが、名前は自分のものだ」と、世間 から与えられた評価に対する執着を見せる。 しかし、ヴィンセントがいかに宇宙に憧れているか、そのためにどれだけ努力したかを同じ屋根の下で目の当たりにするうちに、ジェロームは非常に協力的になっていく。
自分がどこかで恥じていた銀メダルを、ヴィンセントが手放しで褒めたことも、その変化の一つだったのだろう。契約だけの関係から、二人は初めて遺伝子抜きの親友を得る。
そして注目したいのは映画の最後だ。
警察の嫌疑も晴れ、ヴィンセントが宇宙船に乗って地球を離れたその瞬間。ジェロームは、大量の遺伝子ストックを残して自分自身を焼却してしまう。宇宙と地球。ごまかしも連携も出来ないその距離で、二人の「ジェローム」がいることは致命的なミスを生むからだ。
ヴィンセントが「不適正者」が居た証、フケや髪を焼却して来たその焼却炉で、ジェロームは銀メダルを抱いて幸せそうに自身を焼きつくす。
それはつまり、遺伝子も名前も君のものだ、という最大のエールであり、献身だ。
エリートらしくあれと期待されて来た男が最後に選んだのは、一番の親友の努力に応え、自分の全てを明け渡して背中を押すこと。
「不適正者」は栄誉の頂点へ、「適正者」は無償の愛のため独りで死ぬ。この対比が効果的だ。
ヴィンセントはジェロームから姓(生)と無償の愛を受け、その亡骸の上に立っている。これらのことから、ジェロームはヴィンセントの母だと言える。
この映画を観ている人も多いだろうが、観てない人がいればとにかく観て欲しい。母の顔をしたジュード・ロウを観て欲しい、と言うのも勿論あるのだが、観た後に一緒に悶えて欲しいというのが一番の理由だ。
物語の続きを想像する。
任期を終えたヴィンセントが家に戻った時、そこにジェロームは居ない。「旅行にいく」と言う置き書きを信じて、ヴィンセントはずっと待っているだろう。宇宙飛行で観たものを話すために。しかし地球のどこにも親友は居ない。
エンドロールが流れた後、ふと、ヴィンセントが誰かに「宇宙飛行かジェロームか選べ」と言われたら、きっと親友の命を取ったのではないかと考えて、堪らない気持ちになる。その苦しさを味わって欲しいと、誰か一緒に同じ痛みに耐えてくれと、そういう、それだけの話なのだ。
思い切りの良すぎる母も考えものですね。
↑押されると嬉しいボタンです。
奥歯をぎゅっと噛みしめる
本当はガタカの話をしたかったのだが、それよりも話さずにはいられない事柄が出来てしまった。
指原莉乃「…松本さんが干されますように!!!」松本人志「体を使って」発言に反応
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190116-00000020-sph-ent
詳細を言うのも嫌なので、と言うかもう既にかなりの人は知っていると思うので説明は省く。
また、暴行事件についても詳しいことが分からないので「アイドルの努力が報われる環境であってほしいなあ」と言う他ない。
とにかく印象に残ったのは、松本の発言を受けた直後の指原の表情だ。
虚をつかれ、本当は激しく怒りたいのに、環境がそうさせず、味方もおらず、奥歯を噛み締めて曖昧な顔を作る。
あれを見た瞬間、ああ私はこの顔を知っている、と思った。そしてこうも思う。女の顔だ。
自分の怒りが、周りの誰にも共感されないかも知れない状態で怒りを表明するのは、とても勇気がいることだ。ましてや、その怒り自体が批判されうる状況では。
セクハラは巧妙に隠蔽される。親愛とか笑いとか、賞賛とか、そういう一見プラスの言い訳をまとってあらゆるところに現れる。
スキンシップだとか、女の子の方が華があるだとか、本人にとってはそんなおためごかしの範疇をとっくに超えているにも関わらず、セクハラが無い方が助かる人間たちが「考えすぎだ」と弱者の口を閉ざさせる。
女はそれを知っているから、自分を守るために、許したふりをしなければならなくて、曖昧な表情を取るのではないか。「痛いなら痛いと言え」という単純な構造ではないところが、セクハラや暴行に対する議論をややこしくさせている一因のようにも思う。
「セクハラはダメだと知っていること」と「セクハラ被害者の傷や怒りを増やさないこと」は、かなり別の話だろう。
それからツイッターでは「さっしーは松本を上手くあしらってあげる、いい女」というような意見も見たが、別に指原も上手くあしらいたくてやっている訳ではあるまい、と思う。
もし彼女があそこで声を荒げ顔を歪めて憤って見せていれば、きっと彼女には少なからず批判の声が届いただろう。スタッフだって、彼女に笑いを要求したはずだ。
「バラエティー慣れした、多少のセクハラには動じない、成熟した女性」という期待されたイメージをなぞって見せなければ、周りが瞬時に敵になるかも知れない。
そんな中、単なる笑いで済ませずに自分の憤りを示したということは、非常にすごいことだと思う。ヘラヘラ笑ってしまうことも出来たのだ。それが一番簡単で、一番屈辱的なやり方でも。
今回の事件を「いい女だね」「よかったね」だけで終わらせないでくれ、と本当に思う。なぜ傷ついた方が傷つけた方のフォローをしてやらなければならないのか。おしっこ引っ掛けて許されるのは赤ちゃんまでだ。
ここ数ヶ月、ずっと考えている。親しかった教授たちがセクハラを告発され、ほとんどお咎めなしでヘラヘラ大学に戻ってきてから。
ミソジニー的振る舞いを批判していた彼らがセクハラをした事実。本人たちは誤解だと言っているようだが、それならそれでなぜ過去の自分や学問に誠実でいてくれないのか。社会学の教授が、使用していた統計データを改ざんしていたと告発されたのに、誤解だと言ってデータを使い続けているようなものではないのか。
廊下ですれ違う度、喉が焼けるように熱くなるのに、被害者ではない私は、彼らに問いかける言葉も勇気も持たない。ただ、奥歯が割れるほど噛み締めて立っている。
私情が挟まってごちゃごちゃしてすいません。
このボタンを押すとハラスメント加害者の心に良心の呵責と想像力が訪れます(ように……)
傾いた弁当が奇跡的に旨い
(↑猪と私と男二人を関係付けたい気持ちのイラスト)
前回のエントリからだいぶ時間が空いてしまった。週二更新を目指す身としては反省しきり、不徳の致すところである。
本来は「SF映画ガタカにおいてジュード・ロウとは母である」という話をしようと思っていたのだが、押し入れから溢れる本と格闘しているうちに日が流れていってしまった。
骨子は先日、所属ゼミで発表した時のものがあるので足りないのは気合だけだ。ジュード・ロウママを観て欲しい気持ちだけが空回り。
因みにゼミでは「絶対!!!ガタカ!!!!やる!!ママ、観てーーーッッ!!!」と人間の意地を捨て床でジタバタして発表の時間をもぎ取った。ゼミの男子らには若干申し訳なかったが、大学の知り合い全員に腐女子と知られている女に自制心などありはしないので諦めてもらうほかない。
今年の紅白だが、家族に付き合って渋々観ていた昨年と違って椎名林檎・宮本浩次と米津玄師、サザンが出るということで最初からかなり乗り気で観た。テレビは乗り気で見るに限る。
ユーミンと桑田さんがキスしているところはかなり良かった。同じステージに互いの配偶者が揃っていると考えるとかなり面白い。
それから、サザンが三曲以上演奏するとそれまでを差し置いてサザンのコンサートのようになるのは発見だった。弁当が傾いて煮物の汁が全おかずに染み渡るみたいなことか。
去年は「各世代が微妙に知らない曲を恐る恐る披露する会」になっており、しかもあらゆる演出がド滑りしていたので最悪だったが、今年は「NHKの権力を駆使した大プレゼン会」になっていた。次回もこの路線であって欲しい。
今年の末に「〇〇紅白歌合戦」にどんな元号が入るかは分からないが、とにかく良い一年であれと思う。筋トレとブログ更新は継続したい所存だ。かなりのすっとこどっこいなので難しいかもしれないが、色々手抜かりのないようにやりたい。
というわけで、今年もβ次元日記にお付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いします。
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