「タピオカを飲む女は頭が悪い」のか
表題と中身にはさほど関係がない。
イースト・プレスのWeb文芸誌「Matogrosso」で連載中の漫画、「カイニスの金の鳥」をぜひ読んで欲しくてこのブログを書いている。
どういう作品か。
19世紀イギリス。片田舎に住む主人公は、本を読み小説を書くのが好きだ。しかし「女の自分が書いた小説」を周囲の人々に見せても「女の遊び」などと言って舐め腐られる。
そこで男性の筆名でロンドンの出版社に送ったところ、なんとあっさり出版の運びとなり、男友達や住居を得ることが出来た。主人公は女の自分では見られない景色を見るために、男装してロンドンでの生活を始める。
ざっくり言うとこういう話である。が、あらすじだけでも好きな人にはかなり刺さるんではないだろうか。
この作品の良いところは、主人公とは違う価値観を持つ人物を、悪人として描いていないという点だ。
自分が書いた小説を「女の遊び」と言う男。難しい本を自分の手から取り上げて「君には無理だよ」と善意で言う男。ロマンスや恋に憧れ、良い男に見初められるチャンスが来た時に備えて自分の腰をコルセットで締め付ける親友。
主人公はそれらの人々や、人々が思う「自明の決まりごと」に苛立ちはするが、それらを切り捨てたり、憎んだり、糾弾したりしない。ロンドンに行く時にも「こんな田舎出て行ってやる」などとは言わない。「男の名前で有名になって、名声が高まった時に、その正体が女だと明かしてやろう」という野心的な計画を持ってはいるが、世界そのものを憎みはしない。
他者の愛や善意を認めながら、しかし、女という性をめぐる規範の息苦しさに抗う主人公のあり方は、世界の全てを敵と見なすようなキャラクターよりも遥かに魅力的だ。
現在は6話まで公開されている。主人公がロンドンでどのように生活していくのか。続きが気になる漫画である。
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